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中小企業の社員教育、社長の考え方 経営環境が悪化する中、継続的な教育投資で業績改善

ご紹介するのは、コマツサービスエース株式会社の佐野俊和社長です。

コマツサービスエース株式会社は、株式会社小松製作所の販売代理店で唯一「サービスエース」という名称で、独自のサービスを提供しています。 また、この不況下で経営環境が悪化する中、継続的な教育投資を行なっている会社です。

佐野社長は、至極真っ当なお話を、ユーモアをふんだんに交えながらできる方。実務に長けた戦略家であり、気さくで社員に対する愛情豊富な経営者です。
佐野社長はお父様の仕事を引き継いで社長になりましたが、以前は株式会社小松製作所に勤務されていました。 現在もコマツと太いパイプを持ち、さかんに交流を続けているところを見ると、社員時代のご活躍の様子が想像できます。

さて、今回はそんな佐野社長に社員教育についてお話を伺いました。

人材コンサルティングの事例

コンサルティング概要

社員教育に熱心な地方の中小企業が、予測されていた公共事業予算削減を見越して事業の見直し、人材の育成を急いでいた。 2004年に依頼を受けて以降、社長のニーズと社員のウォンツを結びつけながら、ミドルクラスの社員の育成や社員自らが主催する自由参加研修のサポートなどを行なっている。

企業のニーズ:お金をあまりかけずに真っ当な社員教育をしたい

地方の中小企業ゆえ、社員研修の大切さは承知しているものの、大手教育機関に依頼できるほどの教育投資はできないため、 様々な手を使って研修講師を捜しては教育を行なってきました。
これまで個人で教育やコンサルティングを行なっている人と数多く付き合う中で知ったことは、人を育て活かすことに喜びや使命感を持ってやっている人が思いのほか少ないこと。 チームワークやコミュニケーション能力の大切さを教えている割には、自分がそれをできずに企業をスピンアウトした人が結構いること。 費用対効果の意識が薄かったり、甘かったりする人も多く、失望の数は少なくありませんでした。
(コマツサービスエース株式会社 佐野俊和社長より)

POINT
企業は、人材育成の重要さを分かっていても、潤沢に教育資金があるわけではありません。そのため、できるだけ中間業者等を排し、 教育に関係ない無駄な費用を削減し、経営者と直接話をすることで誤解などから生じる修正コストを限りなくゼロにします。

企業のニーズ:確実に研修成果をあげたい

最初は「中堅社員の意識向上の研修」を依頼しました。今まで、父親のような年齢の講師にばかり指導されてきた社員にとって、 自分と同年代の講師が自分にない視点で課題を語り、自分が持ち得ていない能力を発揮する姿は、知識を得る以上に大きな刺激となったようです。 そして、当時中堅だった社員も、今では10名近くが管理職に育ってくれました。
ここ数年は「社員が社員を教える」という姿勢を、押しつけではなく、うまく引き出してくれています。事務局も社員が担当し、 私は彼らの報告を受け簡単なアドバイスをすればいいようになってきています。
出来の良い会社ではないので社員のレベルは知れていますが、それでも決められたテーマに従って、それなりのプログラムを自分たちで作って 講師役を務めている姿を見ると愛おしくなります。
(コマツサービスエース株式会社 佐野俊和社長より)

POINT
既製品の研修が必ずしも効果があるとは限りません。なぜなら会社の事情は各社それぞれだからです。型にはまった内容をこなすような研修から、 社員自ら研修を企画して同僚に声をかけて参加者を募り、自分たちで講師も務める。そんな研修がぴったりくることもあるのです。

企業のニーズ:経営者も学びたい

この6年間、私自身、五十嵐さんと社員教育について話をする中で、教育姿勢を問われたり、考え方に関して意見を言われたりするなど、今までにない体験をすることになりました。
「何を知り、何を感じると、そもそも、人は自ら動くのかということを熟知し、そうなることが何より学ぶ人の幸せに繋がるという確信を持っている」 からの指導のあり方だと、最近つくづく感じるようになりました。有り難いことだと思います。
(コマツサービスエース株式会社 佐野俊和社長より)

POINT
ほとんどの経営者は会社の中で、誰よりも勉強熱心で博識です。ただ、できるが故に、できない人や頑張れない人の気持ちがわからない時もあります。 一方、従業員にとっては、なかなか社長にモノを言えない、本音をぶつけられないことがある。だから、私たちが全く別の角度から社長の想いを社員に伝え、 社長が見えていなかった社員のポテンシャルを引き出してあげる。お互いの愛情や信頼に気付かせてあげる。 実はこれこそが長期スパンで教育をサポートすることの最大のメリットです。

経営者は社員の人生に貢献すること。

コマツサービスエース株式会社 代表取締役:佐野俊和氏
五十嵐:佐野社長は社員教育に熱心ですね。その理由を聞かせてください。
佐野:人が育つのを見るのが会社をやっていて一番楽しいからです。 福井に帰ってきた当初は、方針を伝えても理解できない、ディスカッションをする仕方も知らないなど、基本的なビジネススキルに欠ける社員が多かったため、 必要に迫られて教育をしていました。教育を続ければある程度そういうスキルは身につきますが、その一方で、見違えて成長する社員が出てくることに気づきました。

経営書などを読むと、経営者の役割の1つに「人を育てること」と書いてありますが、 急成長する社員を目の当たりにして、人を育てるということは社員の人生を変えるような影響を与えること、言い換えれば社員の人生に貢献することなのだと思うようなりました。

経営者も、企業業績や顧客評価以外に自分の成果を測定する物差しがないと、精神的にきつい時があります。なので、人を育てるということが、経営者として重要な役割であり、 それが極めて大きなやりがいや喜びをもたらすものであるなら、自分自身の経営者としての評価ポイントにしようと思いました。

しかしながら、そういう発想になったらなったで、ただ単に社員教育の量を増やすばかりで、社員からは「もう勘弁して欲しい」という悲鳴。大反省しました。 今は、少し考え方も大人になって、教育は企業としての本質的な目的だと思うようになりました。

人はそれぞれの人生で、自分が納得できる目標を持たねばなりませんが、80年位ある人生の半分の時間を割く行為として「働く」ということは、 人生を豊かにする最良の機会や手段だと思っています。働くことの意義がそうであるなら、その効果を高めることは、働く場である企業の本質的な機能であるべきだと思っています。
少し前までは、塾に通わせているのに思ったような成績を上げてこない子供にいらつく身勝手な親のような感じで、 むしろ、喜びであるべき教育がストレスになっている時期もありました。今は、教育は経営手段ではなく理念に基づくものだと思うようになったので、そういうあせりはなくなりました。

苦い経験から学んだこと

株式会社3rd Place講師 五十嵐健
五十嵐:佐野社長は社長を引き継ぐために故郷の福井に戻られたわけですが、東京で働かれていた時とは何もかも違う環境に戸惑いはありませんでしたか?
佐野:一番の問題は自分が極めて未熟であったことですね。サラリーマンしかやったことのない、独身で人間としての経験もろくにない、 自分勝手なやる気のある馬鹿に、パパの息子という権限を持たせた訳ですから、当時、社員は相当混乱したと思います。
丁度戻ったあたりからパソコンが本格普及したため、当時、社員に出した通達や方針などが全部データとして残っていますが、今読むと、恥ずかしくて失神しそうになります。

二つ目の問題は、儲けるということ以外に会社に社員が共有できる価値観やビジョン・制度が明確になっていなかったことです。 これは、ほぼ当時の日本の会社がそうであったように、弊社独自の問題ではなかったと思いますが、そこでの実際の問題は、 改めて価値観やビジョンを出して方向を整えようとした場合、物事の普遍化、概念を理解するだけの基礎知識が社内になかったということです。
例えば、これからはサービスの時代だと言ったところで、そもそもサービスという概念が理解できない。ビジネス書などを読ませたところで、 基礎的な語彙の理解ができないので、それ自体ちんぷんかんぷんな訳です。

三つ目は、やはり、父が作った会社ですから、その時点での上級管理職は全て経験豊富な年配者です。 彼らはそもそも新しいビジョンなど必要としないので、理解すらしようとしない。上が動かなければ下は動きませんから、私と会社組織の間には極めて大きな溝がありました。
しかし、そういう人達がいたおかげで、今見ると失神レベルの方針が機能せずに済みましたし、それらの幹部職員が勇退する頃には、 私も若さややる気だけで物事を考えなくなるようになっていたので、そこにかかった手間や時間は丁度良かったように思います。 やはり、知識や能力だけでなく、経験という時を重ねることでしか得られないものというのも人間関係を動かす重要な要素だと痛感しました。

放漫経営とは社員のやる気を引き出さないこと。

コマツサービスエース株式会社 代表取締役:佐野俊和氏
五十嵐:佐野社長の奮闘ぶりが目に浮かぶようです。さて、そんな時代を経て、コマツサービスエースは大きく変化していきました。 今の店舗を訪れると、「本当に建機を扱っている店?」と思うようなお洒落な感じです。 環境が変わることで、働く人たちは変化すると思いますが、何か意図していることはありますか?
佐野:とにかく雰囲気を良くすることを心がけています。大概、家庭や地域や組織でも、人が集まる場所の雰囲気が悪ければ、成果は出ないでしょう。
ただし、「雰囲気が良いこと」イコール「笑顔や笑いが絶えない職場・ストレスがかからない職場」ということではありません。 厳しい業績の時には、緊張感やストレスは高まるべきですし、方針や理念に反する行為が成された場合には叱責や怒声もあってしかるべきだと思っています。
雰囲気の良さとは、そこで働く社員同士に信頼感や同志としての使命感が共有されていることではないかと考えています。 そのために、言語や価値観の共通化を行なう、人によって判断や評価の変わるような決め事や制度については、かなり細かく明文化し明らかにする、 また、極力そのような決め事を行なう場合には、勝手に決めないように努めているつもりです。

もう1つは5Sですね。サービス業ですから、整理、整頓、清掃は基本中の基本ですが、感謝の気持ちを植え付けることを大きな目的として取り組んでいます。
社員の若年化が進む中で、年配の社員から、若手社員にモノや設備を大切に扱う気持ちや他者への配慮が薄れているということがこの数年課題として上がってきました。 いきなり全てに感謝しろと言ってもわかる訳がないので、身の回りや周囲の人にまず関心を持たせることから始めようと着手しました。 自分の担当箇所の5Sを維持するためには、こだわりや他者の協力が必要になりますから、そこからいずれ感謝や配慮に繋がればと思っています。

五十嵐:最後に、佐野社長の企業感、経営感についてお聞かせください。
佐野:会社は経営者の器以上にならないというのは真理だと痛感しています。が故に、まだまだ至りませんが、以下のことを大切だと思っています。

1つは、自分自身がたゆまず勉強を続けること。勉強と言っても学生時代のように教科書があるわけではないので、人との出会い、読書、体験をできる限り増やして、 その中から、自分の成長や反省に繋がるものを明らかにしてゆこうとしています。
反省や成長の確認に一番有効なのは、以前に自分が書いて社員に示した方針書や計画書を見返すことですね。前年、前々年との比較では、絵に描いた餅に終わった夢や希望の残骸や、 思いつき経営の最たるものをつきつけられます。昔の書類は、自分の愚かさを嫌というほど思いださせてくれます。

2つめは、社員のやる気を生み出すことです。「放漫経営とは社員のやる気を引き出さないこと」を戒めとし、自社を振り返るようにしています。 目標やビジョンは明確か?目標達成に必要な組織になっているか?権限の委譲はなされているか?きちんと評価されているか? 評価を求める前に学習やスキル修得の機会を与えているか?不公平はないか?などを確認します。

3つめは、明るくふるまうことでしょうか。未だ成功しているとは言えませんが、やはりリーダーは明るく元気にふるまい、 職場の雰囲気を意識して明るくしないといけないと思っています。

五十嵐:最初は佐野社長の言葉になかなか反応できなかった社員の皆さんが、今は自ら講師役をするなど、社員同士で教え合うようになりました。 それができたのも、佐野社長が本気で教育を行ない、社員の成長に深くコミットし続けた結果だと思います。 そして、社員の皆さんの、充実した研修を行なってくれた社長への感謝の気持ちが、上司から部下、先輩から後輩への教育へと引き継がれているのだと思います。 本日はありがとうございました。
コマツサービスエース株式会社
福井県福井市主計中町13-7
建設・産業・環境機会機器の販売およびメンテナンス、建設・産業機械機器のレンタル
建設機械機器の設計・製造・レンタルおよびメンテナンスを行なう企業。
http://www.serviceace.jp
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